如何ともしがたい何か

便所の壁に殴り書き

越智道雄・町山智浩「オバマ・ショック」(集英社新書)

 英語圏比較文化研究者の越智氏と、映画評論家でコラムニストの町山氏との共著。オバマ大統領の誕生を中心にすえて、オバマが大統領に就くまでにいたる、アメリカ社会の変遷について、対談形式で考察している。といっても難しい内容ではない。

 実際にアメリカに在住する町山氏が、映画業界を中心にフィールドワークする中や普段の生活で感じたことや見たことを端緒に、アメリカ史にも明るい越智氏と議論を深めていく。実際、町山氏もアメリカ史について相当勉強しており、オバマ誕生の理由をさかのぼると、アメリカ建国以前の植民地時代にもさかのぼることがわかる。

 読後に感じるのは、今まで世界の覇権を争い、ソ連崩壊後にはまさに覇権を手にしたと思われていたアメリカだが、実際アメリカ国内を見てみると、相当いい加減な国民と、いい加減な綱渡り政治をしていたことがわかる。

 また、オバマの今までの生い立ちを振り返ることで、現代におけるアメリカ人とは何なのか、現代のアメリカ人が考えるアメリカ人とは何なのかということにまで考察は及ぶ。すっかり崩壊状態になっているアメリカでは、オバマのような人物は担がれるべくして大統領になったようだということが分かる。

 現代アメリカを知る上で、簡単にそのエッセンスに触れることができる本だと思う。内容もそう難しくないし、対談形式なので読みやすい。