如何ともしがたい何か

便所の壁に殴り書き

竹光誠「日本人なら知っておきたい神道」(KAWADE夢新書)

 日本古代史などを専門とする明治学院大教授が、題名にある通り「神道」について、細かくいろいろと教えてくれる本。面白い。
 日本人の血の中に意識しようがしまいが流れている「神」という存在について、まずは太古の日本人が自分たちを超越する自然について畏怖を抱き、神という発想を得たとする、そもそもの発祥の説明から入る。「一神教」とは違い「八百万の神」がいる理由や、国家神道の発生などといった日本の歴史とともに変遷を続ける神道の姿を、日本書紀の時代から現代まで時系列でたどり、神道の姿を明らかにしていく。1-4章については、このような感じで歴史とともに神道の移り変わりを見ながら、基礎知識を丁寧に学ぶことができる。
 5章からは趣が変わり、鳥居の意味や境内の配置、社殿の種類など、われわれの身近な神道についての解説に入る。神殿建築の様式や鳥居の種類、さらには禊ぎの方法や玉串の捧げ方、神官になる方法の紹介まで、言うならば神道の「ハウツー」になっている。
 一通り読むと、仏教を先鞭とするさまざまな宗教や信仰がある現代日本にあっても、気がつかないところで神道が生き続けていることが分かる。ちなみに著者はクリスマスについても、

日本の古い伝統をふまえた忘年会やお歳暮のやりとりを「クリスマス行事」の名で行う者がふえただけである。(p.86)

とまで言っている。自然をベースに生まれた神道では、さまざまな季節行事があり、日本人はその一つにクリスマスを組み込んでしまったというわけだ。要するに初詣と同列ということだ。
 これ1冊でも神道の基礎知識から、困ったときのハウツーが手に入る。本棚に保管しておきたいと思う。