如何ともしがたい何か

便所の壁に殴り書き

「サブプライムローン問題とは何か」春山昇華

 正直言って、金融のことはよくわからなかったりする。「金融」と聞いて真っ先に連想するのが「ナニワ金融道」な程度だ。

 とはいえ、曲がりなりにも社会人をやっていると、たまに使わざるを得なかったのが「サブプライムローン」という言葉。もはやずいぶん昔の話であるのは事実で、現時点で当面の問題なのは欧州危機あたりの話だったりはする。

 そんな時流にありながら、手に取ったのは春山昇華著「サブプライム問題とは何か」(宝島社新書)。実はサブプライム問題の嵐が通り過ぎた後、この本を買っていたのだが、本棚の肥やし状態になっていた。

 何となく読み始めたものの、分かりやすくて面白い。著者の春山氏は30年も相場の世界で生きてきた人だそうだ。ちなみにブログもある。

 話はアメリカの住宅バブルが盛り上がる直前から始まる。アメリカの金融政策や住宅優遇政策、世界的なカネ余りなどから、一挙にアメリカの住宅市場がクローズアップされ、一気にカネが流入したという背景から入り、「サブプライムローン」の誕生までが解説される。

 また、ローンが証券化されることにより、債権というなの爆弾が世界中にばらまかれていった様子を、当時のデータや経験を基にたどる。 その中でわかるのは、あまりにもアメリカの住宅バブルに浮かれすぎていた人たちや、どんちゃんさわぎの様子。嘘と虚飾にまみれたローン組成の嵐。著者はこれを「モラルの低下」と割とやんわりとした批判の仕方をしているが、行間からは厳しい視線を向けているのがわかる。

 同時に、バブル崩壊までの道程で、さまざまな場所から崩壊の予兆がでていたのにも関わらず、当事者だけでなく中央銀行すらも目を背けていた節があることを見逃さない。浮かび上がるのは、みんなが踊り狂っていたということだ。
崩壊後については、金融機関だけに救いの手が差し伸べられ、サブプライム層など弱者への救済は薄いという状況があかされる。

 そして気になるのが、日本にも同様の魔の手がやってくるかもしれないという指摘だ。「日本版サブプライム」とでもいうべきものらしい。リバース・モーゲージという仕組みで、主として団塊の世代を対象に、不動産を担保にお金を貸す仕組みですでにいろいろあるらしい。初めて知った。

 問題は、アメリカで嘘と虚飾でサブプライム層にお金を貸していったように、日本でもこの仕組みを悪用する輩が出てくるのではないかという懸念だ。

 アメリカでは破綻した仕組み。仕組みそのものは必ずしも悪くない。しかし、嘘と虚飾が破綻させた。リバース・モーゲージも悪い仕組みではない。しかし、嘘と虚飾があれば日本でも何が起こるかわからない。だまされた弱者だけがなくことになるかもしれない。

 初版が2007年ということもあり、いまさら読んでもどうなのかという指摘もあるかもしれないが、個人的には非常に面白く読むことができた。日本のバブル崩壊にせよ、この手の経済危機の根底には同じモデルが潜んでいるのがよくわかる。
 やる夫で学ぶサブプライム問題と一緒にぜひチェックな本。