如何ともしがたい何か

便所の壁に殴り書き

正直なところビートたけしって面白いの?

 テレビで見かけるビートたけしはもっぱらコメンテーターみたいな出演が多い。まあそれはいいとして、コメディアンとして登場するとなるとまた雰囲気ががらりと変わる。奇天烈な着ぐるみをまとって、いつもながらのメイクをして、カメラの前に登場する。もちろんほかの出演者は大爆笑なわけだけど、正直なところ「これって面白いの?」と感じざるを得ない。ビートたけしって面白いのか?

 おそらくはビートたけし本人が痛感してるんじゃないと思うのだが、こうやって着ぐるみと変なメイクでしか笑いをとれないってのはけっこう致命的なのではないかと思う。こう書くと非難集中が必至といったとこなのだが、ノリが「オレたちひょうきん族」(フジテレビ、1981-89)で止まったままな気がするのだ。

 リアルタイムでないので何とも言えないが、断片的に知っている「ツービート」時代の漫才や「ビートたけしオールナイトニッポン」(ニッポン放送、1981-90)、あるいは「北野ファンクラブ」(フジテレビ、1991-96)あたりの話芸がコメディアン・ビートたけしとしてはピークだったのではないだろうか。

 そして、そんな着ぐるみと変なメイクで登場するビートたけしを見て笑う共演者たち。果たして本当に面白いと思って笑っているのだろうか。ビートたけしがやるから何をやっても面白いはずという先入観みたいなものがあって、無理解なまま笑ってるだけなのではないだろうか。あるいは笑っておかないとだめ、みたいな空気があって、笑わないと非難されるから笑ってるんじゃないかと感じてしまう。正直なところ、品を感じない。ビートたけしが放つべき下品さって、そういうのではないような…。もっとなんかこう、上品な下品さが持ち味だと思うのだが…。なんか安易なのだ。そんな安易な笑いをビートたけしみたいな偉人にさせておいていいのだろうか。

 多分、もう昔のようなきわどくかつ鋭いネタで笑いをとるようなことができないという思いがビートたけしにもあるんだと思う。危ないネタなら放送ではカットされるし、無難な着ぐるみネタしかオンエアには乗らない。でも、世界のキタノがやるネタなんだから笑っとかないといけない。そんな微妙な空気がブラウン管(古い)から伝わるような。

 とはいえ、もしかしたらもう軸足を映画監督の方に移しているのかもしれない。その映画監督としての立場を際立たせるためにやってる着ぐるみなら、まだ納得できるような気もする。