如何ともしがたい何か

便所の壁に殴り書き

せっかくだし家計簿つけようぜ、という話

 もともとマメな性格ではないので、呼吸と食事と排便以外であまり長続きしている習慣がない。しかし、唯一長続きしている習慣がある。それは家計簿だ。

 もともと独り暮らしの貧乏学生をしていた時、逼迫した家計を何とかしようと本格的に始めたのがきっかけ。長期間中断した時期もあったものの、何だかんだ継続している。

 自分も決して節約を励行できる性格ではなく、気を抜くとお金を無駄遣いしてしまうクチ。しかしながら、大きな買い物をしなければ、実は毎月少ないお給料だけの収入できちんと黒字を出すことができている。もっとも、独身で無趣味というのもあるだろうが、家計が黒字体質になっているのは自慢できるところだと勝手に思っている。

 ネット上を見ると、家計の節約に関するエントリが多くみられるが、アホの子の自分には難しいフィナンシャルプランナー的な話であったり、精神論的な内容であったりと、正直ピンとこないことが多い。自分の経験を振り返ると、振り回されるようにいろいろ試すよりかは王道の家計簿をやればいいのにと思う。

 もちろん、家計簿をつけると収入が増えるということは当然ありえない。それは別の問題で、せいぜい支出を削ることに寄与するくらいだ。とはいえ、それだけかなと自分も考えていたのだが、家計簿をつけることによる副次的な効果があることに気がついた。

 まず、自分が普段の生活でいくらくらいのお金を使うのかということがだいたい分かるようになってきたということだ。これは当たり前のように見えるかもしれない。しかし、自分が1カ月生活する上での生活費をきちんと把握している人はどれくらいいるだろうか。自分が1カ月生活する上の食費をどれだけの人がきちんとつかめているだろうか。案外アバウトにしか知らない人が多いのではないかと思う。「お金がない」と一口に言うのは簡単だが、「いくら足りないのか」と問われて果たしてどれだけの人が具体的な金額を答えられるだろうかということだ。家計簿をつけることで普段の支出と収入のバランスが見えてくる。それによって、「いくら足りないのか」が見えてくる。

 自分の家計の全体像が見えてくれば、金銭感覚も研ぎ澄まされてくる。何気ない買い物が、家計全体にどれだけの影響を与えるのかが見えてくるのだ。過去3カ月くらい、それぞれの月で食費にどれだけお金をかけたかがつかめれば十分だ。それらのデータを元に、1日平均でいくら食費に使っていたかや、給料に対する比率を占めるかなど、多面的に調べてみるといいと思う。数字は正直だ。翌日からは何気なく買っていた自販機の缶コーヒーですら一瞬だけためらうようになる。

 では、家計簿をつけるという作業を継続するにはどうすればいいのか。家計簿をつけるという作業は案外、面倒である。家計簿をつけようとして三日坊主で終わった人も多いはずだ。恐らくこれは、わざわざ出費をどこかに記録したり覚えておくのが億劫だから続かないのだろうと思う。

 岡田斗司夫氏のベストセラーに「いつまでもデブと思うなよ (新潮新書)」がある。この本で説明されているダイエット法はきわめて単純で、「食生活をすべて記録しろ」という一言に尽きる。いわゆる「レコーディングダイエット」というやつだ。食生活をすべて記録することで、今までどれだけ自分が無駄に食べているかを冷静にあぶりだすだけでいいという。いかに自分がいい加減な食生活をしていたかをリアルな記録で実感することで、たとえば間食といった無駄な食事を削減できるというのだ。

 もちろんこれには「毎日の食事をきちんと記録する」という前提がある。これが大きなハードルになると思いきや、「レコーディングダイエット」はこのハードルをうまく活用したダイエット法であることがわかる。どういうことかというと、記録するのが面倒であれば食べなければいいのだということだ。こう見れば、怠け者ほどダイエットができると解釈することも可能だ。

 家計簿も一緒だ。家計簿をつけるのが億劫であればお金を使わなければいいのだ。とはいえこれは極論であり、そううまくいかないのも現実。しかし、お金を使う回数を減らすことは可能だろう。特に不要不急の消費に関してはてきめんの効果がある。「この出費、記録するのが面倒だ」と思えば、何気なく買っていた自販機の缶コーヒーの料が減る。また、記録するのが前提なので、レシートに残らない消費を敬遠するようになる。いずれにせよ、少なくともお金を使う回数を減らすことにつながるのだ。

 ちなみに自分はルーズリーフを使ってこまめに記録しているのだが、今はネットでもいろいろな家計簿サービスがあるのでそれを使えばとても効率的に家計の全容を把握できる。補助的に使っている「OCN家計簿」はとても便利だと思う。

 というわけで、お金に限らずいろいろな無駄を削いでいくのは恐らく悪いことではないはずだ。自分は家計簿でお金の全容を把握することがある程度できているので、このノウハウを別の何かに使えないかと考えている。たとえば時間とか。しかし、まだそのあたりまでうまくいっていないのが現状だ。むむ。