なんだかいろいろと残念な本だった。
神田神社や大神神社、鹿島神宮に出雲大社、そして明治神宮や靖国神社まで、さまざまな神社について、「自然暦」という視点でそこにその神社がある理由を論じながら、かつてその神社を建てた人たちの思想に迫るという内容。
自然暦とは、
とする。辞書を引いても出てこなかったのだが、二十四節気七十二候のようなものらしい。
この本では、自然暦にのっとって、ある神社と関係の深い神社や遺跡の位置関係を比較し、いずれも春分・秋分の日没方向などで結ぶと、いずれも法則通りに配置されていると説く。例えば京都・吉田神社の春分・秋分の日没方面には京都御所、夏至の日没の方角には上御霊神社、冬至の方角には下御霊神社がある、といった具合。
なかなか面白い着眼点なのだが、読み進めていくとちょっと残念な気持ちになってくる。まず、それぞれの位置関係が自然暦の日没・日の出の方角に並んでいるという事例をこれでもかと挙げてくるが、説明する地図が概念図で必ずしも正確さを示しているかというと疑問が残る。また、「この配置は偶然とは考えにくい」といった言い回しで終わるばかりで、もう一歩踏み込んだ学術的検証がない。例えば、正確な配置ができるのかどうか、当時の測量技術について知りたいところだが、まったく言及がない。
また、京都の一角など小さな範囲では十分説得力を持つ主張だが、大胆にも関東と関西をこの法則で結んでしまうのはやや難がある。
というわけで、若干「トンデモ」の要素が入ってしまっており、残念な読後感。悪気はないのだろうが、仮説どまりの内容で、議論が飛躍している。数ある神社のガイドブックとしてはありか。あくまでも入り口として。