如何ともしがたい何か

便所の壁に殴り書き

「論文の書き方」清水幾太郎(岩波新書)

 定期的に読み返す本で、すでに4~5回は読み返しているであろういわば「座右の書」の一つ。いまさら説明する必要がないほど有名な社会学者であり、この本もいまさら紹介の必要もないだろう。名文家として知られる清水先生の「文章の書き方」についてのエッセーだ。

 自分も含めて、たくさんの人がただ何となく「書く」という行為に触れているが、清水先生は自分の今までの経験を踏まえて、とことん「書く」という行為について熱く語っている。

 書くという行為は、自分の頭の中にもやもやと漂っているたくさんの観念を、注意深く抽出し、丁寧に順番に並べる。そして、それをわかりやすく理路整然と文字で表現したのが文章であり、その一連の行動を執筆することという。ただ漫然とキーボードに向かっているだけではいけない。書くという作業は、自分の頭の中を整理することと同意語なのだ。清水先生はずばり「文章を作るのは、思想を作ることであり、人間を作ることである」と述べている。

 ところどころに書くことについての名言がこれでもかとある。それこそブログなどで文章を書くという行為に臨む人は多いだろう。読んでおいて損はない。むしろ、教則本として何度も読むべき本だろう。